小指ほどの繭を、重曹を加えたお湯で約2時間煮込み、柔らかくなったところでたらいに移す。ぬるま湯の中で繭玉7粒ほどをこぶしで広げながら重ね合わせ、1枚の真綿を作る。大きく袋状に整えたものを「袋真綿」と言う。この工程は現在福島県伊達市保原町でおこなっている作業です。我々生産者は、その真綿を買い入れ織物にしていきます。
袋真綿を引き伸ばして「つくし」と呼ばれるキビがらでできた道具でからませ、糸状に引き出しながら「おぼけ」という入れ物に入れる。この糸のかたまりを「ボッチ」と言います。この時、ひいている糸は撚りをかけていません。だから、その糸は柔らかくそして、軽いのです。
「ボッチ」から糸を揚げ枠機で綛(かせ)にします。この時大事なことは、糸が絡み合わないように、ソラマメを使っておさえながら1本ずつ静かに揚げていきます。
結城紬の染色は少量でありますので、ほとんど手作業で行われます。ほかの生産者は染色業者に染めてもらいますが、当社は染色組合に所属しているので自分で糸を染めます。草木染や本藍染も自分で染めます。
結城紬の特徴の一つに糊つけがあります。
結城紬の糊の原料はうどん粉を使用します。当社では市販の中力粉を使用します。だいたい最初の糊つけが、糸量の20%を付けますが、それから糸上げ、糊つけを繰り返し、トータル80%程度つけて機織りにかかります。言ってみれば、結城紬で最も大事なのは糊つけの出来にかかってきます。
糊つけが終わったら糸の整経を行います。機械整経と違って、結城紬の整経は手延べで行いますので、テンションを一定に保つことが非常に難しく、我々制作者の力量が問われます。
結城紬の筬は地機用で普通寸間63羽 一尺8分 耳糸を含め680本の糸を使用します。幅広になると最高一尺2寸で756本の糸を使用します。普通幅で39cm 幅広で最高42cmと言う事になります。当然ショールも同じで他産地のような42cmを超えるものは、改良を加えた高機でしか作れません。残念です。当社では昔ながらの竹筬を使用しています。竹筬は鉄筬に比べひじょうに軽く使いやすいですが、現在筬屋さんがいないので、壊れてしまうと大変です。
この作業は糸を分けながら進めていきます。気を抜くと糸はすぐ切れてしまいます。櫛で糸をとかし、丁寧に筬を進めていきます。
この作業は、織りはじめる前で最も大事な仕事になります。
かけ糸掛けとは、結城紬独特の作業で、綿糸を使用して、
綜絖(そうこう)を作ります。普通の織物(結城紬の高機の織機も含む)
は上糸と下糸に綜絖を付けて織りますので、織りあがった布の表面は
均一に平らになります。それに対し地機での綜絖(かけ糸掛けの作業)
は下糸のみかけ糸をかけるので、半分だけ上下運動できるようになります。
専門用語で片口開口と言います。この織り方は地機独特で、織物の表面に凹凸ができ
結城紬独特の肌触りが生まれます。しかしこの肌触りは地機織りだけです。とはいえ、
残念ながら、見た目はわかりません。
結城紬の最後の工程が機織りです。
当社では、重要無形文化財指定の織り、地機で反物を製作しています。
結城紬の地機の特徴は以下の通りです。
結城紬の地機は縦糸を腰で吊って織りあげていきます。⑨で述べましたが、結城の地機では綜絖が片口開口で織られます。上下の糸を開いたとき、張力を織る人が調節して糸に無理な力がかからないようにします。それから、筬で軽く打ち込み、杼で強く打ち込みます。地機に於いて織物の風合いは織る人によって違ってきます。つまり、織り手の個性が直接反物に反映されます。
ようやくこの反物も織り上がってきました。
普通、検査規格では、3丈3尺が必要となります。
この反物は広幅、長尺にと考えておりますので、3丈4尺まで織り進めました。
十分に織り上げたら、キントウと言う数本引きそろえた糸を一本織ります。
最後に5cm織ったらおしまいです。
その後は、見本を織っていきます。この見本の布が当社の小物に変身するのです。